遺言方法の中でも、最も安心確実なものといえる”公正証書遺言”。
遺言の種類の中でも、最も利用されている方法です。
公正証書遺言は、公証人に遺言の内容を口授して行われます。
“公証人”や”公証役場”など、一般の方にはなじみの薄いもので、少々敷居が高いと感じる方もおられるのではないでしょうか。
そんな公正証書遺言の方法を選択する、それぞれ三つのメリット・デメリットを確認し、この方法が合わない方とはどんな方なのか、それぞれ見ていきましょう。
メリット
1.方式や内容の不備による無効の可能性が低い
公正証書遺言は、もと弁護士などから選任される”公証人”に、遺言内容を口授します。
公証人という法律の専門家が関与しますので、遺言の無効などの不安は最小限になり、遺言作成方法のうち、最も安心確実な遺言の作成方法と言えるでしょう。
またこれにより、遺言執行時における、家庭裁判所の”検認”を受ける作業も不要とされます。
2.遺言の紛失や盗難、改ざんの心配がない
自筆証書遺言で自宅保管とした場合は、遺言作成後も、心無いものによる盗難や隠ぺい、改ざんなどの心配が残ります。
その点、公正証書遺言は、原本が公証役場にて保管されますので、遺言作成後も安心の遺言作成方法と言えますね。
3.自身で読み書きできない方も作成できる
自筆証書遺言は、文字通り”自筆”が求められますが、公正証書遺言は、遺言内容の”口授”で行われますので、文字が書けない方も作成することができます。
また、民法の第969条の2(公正証書遺言の方式の特則)では、身体機能的に”話せない人”や”耳が聞こえない人”でも遺言することができると規定されています。
更に
・第976条(死亡の危急に迫った者の遺言)
・第977条(伝染病隔離者の遺言)
・第978条(在船者の遺言)
など、遺言が困難と思われる環境におかれる方も、公正証書遺言の方法で作成することができるのですね。
デメリット
1.作成に手数料がかかる
手数料については、”公証人手数料令”で定められています。
その計算方法は、”遺言◯通につき~”のようなものではなく、以下の表の手数料が
・遺産の渡し先(相続人、受遺者)の金額(以下の表の額)により
・遺産の渡し先(相続人、受遺者)ごとに
加算されていくイメージです。
ですので、手数料は、遺言者の資産額や遺言内容によってさまざま、ということになります。
番号 | 法律行為の目的の価額 | 金額 |
一 | 百万円以下のもの | 五千円 |
二 | 百万円を超え二百万円以下のもの | 七千円 |
三 | 二百万円を超え五百万円以下のもの | 一万千円 |
四 | 五百万円を超え千万円以下のもの | 一万七千円 |
五 | 千万円を超え三千万円以下のもの | 二万三千円 |
六 | 三千万円を超え五千万円以下のもの | 二万九千円 |
七 | 五千万円を超え一億円以下のもの | 四万三千円 |
八 | 一億円を超え三億円以下のもの | 四万三千円に超過額五千万円までごとに一万三千円を加算した額 |
九 | 三億円を超え十億円以下のもの | 九万五千円に超過額五千万円までごとに一万千円を加算した額 |
十 | 十億円を超えるもの | 二十四万九千円に超過額五千万円までごとに八千円を加算した額 |
2.遺言の口授に立ち会う”証人”が必要になる
そして、証人になることができない方が、民法条文で定められており、以下の方はなることができません。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、4親等以内の親族、書記及び使用人
この記述によると、証人として真っ先に思いついた親族などは、まずなることができないと思った方が良いかもしれません。
もちろん、公証役場で「ちょっとそこのあなた、証人になってくれる?」と職員などに頼むこともできませんよね。
証人の選出には、一定の難しさがあるといえそうですね。
3.遺言内容を公証人と証人に知られることとなる
公証人は、それが職務ですから、守秘義務などもあり、安心できますのでともかく、証人2人の前で口授し、その書面内容を確認されるのは、少し抵抗があるのも無理はありません。
保有する資産や、親族なども口授しますので、かなりデリケートともいえる個人情報を明かすことにもなります。
証人は、遺言者にとって信頼のおける、頼りになる方を選出することとなるでしょう。
公正証書遺言の方法を選択するそれぞれ三つのメリット・デメリットを見てきました。
- 方式や内容の不備による無効の可能性が低い
- 遺言の紛失や盗難、改ざんの心配がない
- 自身で読み書きできない方も作成できる
- 作成に手数料がかかる
- 遺言の口授に立ち会う”証人”が必要になる
- 遺言内容を公証人と証人に知られることとなる
このことから、次に当てはまる方は、公正証書遺言の方法での遺言作成は避ける傾向になりそうです。
- 極力費用を抑えたい方
- 何人に対しても、遺言の存在、内容を秘密にしたい方
- 証人として、適任と思われる人物が思い当たらない方
ですが、遺言方法の中でも、最も安心確実なものといえる”公正証書遺言”。
何が何でも”自筆証書”とせず、なんとか上記に妥協点を見いだすことができれば、安心確実な”公正証書遺言”も視野に入れることができるのではないでしょうか。
当事務所では、公正証書遺言の作成サポートや、証人を務めさせていただくこともできますので、お困りの方はお気軽にご相談下さいね。
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